93期 33HR 小野泰洋

私が高校時代に夢を綴った日記には明徴先生の語録のページがあります。中でも大切にしてきたのはバスケの練習中に語った「人が自分に何を言ったかではない 何をしてくれたかだ」と言う信頼の本質を語った言葉です。

日記の頁をめくると人生を左右した出来事も見つけました。志望校に落ち、合格した地方の国立大学に入学手続きに行きながら浪人したいと、何もせずに帰ってきた翌日の日記です。私の反抗に弱り果てた父親と先生のお宅に伺った日のことです。

4月5日 明徴先生はベランダに出て、玄関を開けて僕のくるのを待っていて下さった。やはり先生の言うことには、素直に返事をしてしまう。反対できなくなってしまう。「大学へ入ることは問題ではない 入って何をするかだ」「浪人は社会へ出るのが1年遅れるから社会に対して喜ばれることではない」「合格してうれしいと言う合格の喜びなどと言うのは、受験が作り出した間違った喜びだ。人間を歪める」
先生は、僕は環境にすぐに馴染めない性格だと言う。確かにそんな気がする。夏からでも受験勉強は十分間に合うから2、3ヶ月、通ってみろと言う。僕が最も信頼する先生の言葉には従わざるをえない。

その後、私はその大学へ滑り込みで入学手続きしました。地方ならではの経験豊富な学生時代を過ごし、優れた指導者にも出会いました。その経験や知識のおかげで、静高時代から目標にしていた業界で仕事につくこともできました。多くの人の力を借りることの多い仕事の現場で、先生の言葉は私の支えです。60歳を超えてなお、体育館で聞いた言葉と先生の姿を思い出しています。