32. 秋の夜長にジャズ / 小杉敏氏(83期)のアルバム「ベース・オン・タイムズ」を聴く (2011.9.10)

by Shizuko kanto almuni — on

ジャズベーシストとして長いキャリアを誇る小杉敏氏(83期)初のリーダーアルバム

BASS ON TIMES / SATOSHI KOSUGI


このアルバムは本棚に置いてある文庫本を何度でも読み返すように、折にふれて聞きたくなる、あきのこないものになっています。ライナーノートが充実しているので詳細はそれを見ていただきたいのですが、たとえば「P.S.アイ・ラヴ・ユー」、といってもビートルズのそれではなく1934年発表の名曲は、ギター・ベース・ドラムスのトリオで秋の夜長に聴くのにしっくりきます。ビートルズでは1966年の「フール・オン・ザ・ヒル」が、今度はトランペットもピアノも入ったクインテットで寛げる演奏を展開しています。また、「A列車で行こう」のビリー・ストレイホーン作の「チェルシー・ブリッジ」(1940年頃)は半音階的な進行がお洒落な、ギタートリオ編成の曲。そのほか魅力的な選曲の全10曲をベース・トランペット・ピアノ・ギター・ドラムスで演奏しています。

また、このアルバムのもうひとつの特徴はジャケット。音楽をLPで聞く時代はLPジャケットもそのアーチストの表現手段の一部になっていました。LPがCD・MD・ダウンロード と変遷するにつれてジャケットの意味が薄れていってしまいましたが、小杉氏のこのアルバムは久々にオーラを感じさせる、しっかり作り込みのされたジャケットになっています。

この素敵なアルバムのプロデュースは尾崎正志氏。世界的版画家でマニエルノワールという銅版画技法をフランスで復活させた銅版画家・長谷川潔の「最後の刷り師」と言われる版画制作者(版画の場合、原作者と刷り師との共同作業で作品を完成することが多い。)でもあります。「 マニエルノワール」、つまり「黒の技法」の製作者としての技術が、この黒めのトーンを基調とした完成度の高いジャケットの背景にあるようです。

長谷川潔のマニエルノワールによる銅版画作品


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